塩田英俊のコーナー

出光興産の主導色が強まる新役員人事

 

214日、出光興産と昭和シェル石油の役員人事が発表された、出光興産では、月岡隆代表取締役社長が代表取締役会長に転じ、木藤俊一取締役副社長が代表取締役社長に就任することになった。また、関大輔代表取締役副社長と斎藤勝美元常務取締役が昭和シェル石油の社外取締役に就任することになった。木藤副社長と関副社長は、月岡新会長と共に昭和シェル石油との経営統合構想を推進してきた。創業家の反対が続く中で、昭和シェル石油との経営統合を何としてでも成し遂げるという強い意志を感じさせる人事である。

 

昭和シェル石油側からも出光興産の経営委員会に小林正幸石油事業COOと新留加津昭常務執行役員の二名を派遣する。取締役の相互派遣ではないので、対等とは言えない。31%の持分を持つ出光興産の資本の論理が反映されたとみるべきであろう。今後、両社の統合準備作業は、出光の主導色がやや強まる形で進捗していくと考えられる。(2018年2月20日)

 

 

業界再編効果が如実に表れた石油セクターの第三四半期決算 

214日までに石油会社の20171012月期決算が出そろった。各社とも好業績となった。JXTGホールディングスの発足による再編効果により、業界の石油製品需給が引き締まり、燃料油マージンは堅調に改善したことが好業績の主因である。

 

 

 

JXTGホールディングスは、在庫評価損益を除く実質営業利益は前年同期比1,450億円改善の3,655億円となった。業界内で最も業績改善幅が大きく、経営統合のメリットを顕著に享受できたと言えよう。元々石油製品事業の収益力が高くないことから、17年度の燃料油マージン改善のインパクトは、同業他社よりも大きくなった。旧東燃ゼネラルの販売チャネルで採算販売に注力したことで、系列販売が大幅に増加し、平均卸値を大きく引き上げたとみられる。

 

 

 

 出光興産も業績が大幅に改善した。在庫評価損益を除く実質営業利益は、前期比585億円増益の1,330億円となった。燃料油マージンの改善に伴う石油製品事業の増益に加え、一般炭価格及び原油価格の上昇による資源事業の採算改善も寄与した。一方、石化事業の増益は小幅に留まっており、パラキシレンのマージン低下などが影響した。有機EL事業は、増販により数十億円程度の増益貢献となった模様である。営業外損益も125億円改善しており、一昨年に同社が株式を購入して筆頭株主となった昭和シェル石油の持分法利益への新規貢献などが寄与した。ニソン製油所の予定生産開始時期は、従来2017年度末としていたが、今回、20184月以降に延期された。同事業は成長ドライバーとして期待も大きいが、ベトナムでの大規模プラント操業によるリスクも気になるところである。

 

 

 

昭和シェル石油の201712月期本決算では、在庫評価損益を除く実質営業利益は前期比188億円増益の540億円となった。石油事業が燃料油マージンの改善で177億円の増益、エネルギーソリューション事業が13億円の改善である。業績改善に伴い、17年度の配当を、従来会社予想比で2円上積みし、40円とした。石油事業の収益性の高さには定評があるが、エネルギーソリューション事業は17年度も78億円の営業損失に留まった。

 

 

 

コスモエネルギーホールディングスも大幅に業績が改善した。在庫評価損益を除く実質経常利益は、前期比451億円の改善となる728億円となった。石油製品事業が燃料油マージンの改善等で212億円の増益、石油化学事業がオレフィン系のマージン改善で124億円の増益、石油開発事業が原油価格上昇により36億円の改善である。(2018年2月15日)